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国民は国家に何を期待しているのだろうか。それは、「安心」であり、「安全」であり、国民が生き生きと働き、暮らしていける経済社会環境の醸成であろう。今の日本国家は、その国民の期待にどこまで応えられているだろうか。もちろん、国民全員が満足することは困難であるが、国民の真のニーズを的確にくみ取り、政策に反映させていく努力を続けることこそ、国家に対する国民の信頼となり、国家の活力となり、「国のかたち」を創っていくのではないか。政治も行政も更に一層、国民との対話を深め、努力していき、「信頼の国家」を創り上げていきたい。
「信頼の国家」を創り上げるとき、「公」意識の変革も必要である。我々は、「官」と「民」、「国家」と「国民」を対立概念で捉えがちであり、「官」と「公」を同じ意味合いで使うことも多い。しかしながら、国家と国民が抱える様々な課題への対処は、政治家や行政、いわば「お上」だけが担えばいいというものではなく、国民一人ひとりが参加し解決していかなくてはならないはずである。かつては家族や地域社会で行っていたことを、今は何から何まで「官」が引き受けている。私の目指す新しい社会では、国民は「公」の意識を持って、積極的に「公」の役割を果たし、一方で、国家は国民の考えを適切に意思決定に反映させ、社会の方向性を決めていく。こうした国民と国家の新しい「絆」を構築していくことができないだろうか。
家族、地域の「絆」を土台にした国民と国家の「絆」によって、人、社会そして国をかたちづくることで、世界から見た日本の魅力は自ずと高まってくる。それが、我が国の存在感、国際競争力につながり、世界の中での日本を考える基盤となる。この基盤の上に立って、国際社会が直面する諸課題に、世界との共生を考えて取り組んでいくことこそ、日本のイニシアティブを高めることにつながる。
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(憲法改正について) |
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「国のかたち」を規定する最も大切な法規範が憲法であることは言を俟たない。憲法改正については、自民党の案が示されるなど議論が進んでおり、これを更に進めるため、国民的な議論が必要である。日本の憲法は、硬性度が高いことから、具体的改正プロセスに乗せるためには工夫が必要であり、大きな議論を踏まえる一方で、現実的なステップとして合意が得られるところから改正を行うことも考えられる。
憲法の議論として忘れてはならないのは、国の統治機構をどう考えるかという点である。90年代の小選挙区制の導入、2001年の省庁再編、今回の裁判員制度の改正など三権それぞれ大きな改革が行われてきており、これは憲法に規定されている統治機構の在り方そのものを見直す時期に来ているということの表れではないか。
大きく捉えれば、引き続き構造改革を進め、意思決定のスピードアップを図るためには、行政権のトップである総理のリーダーシップを強化すべきであり、それをチェックする国会の機能も充実させる必要がある。そして強い行政権と立法権が対立した場合には、解散し民意を問う。このようなダイナミックな構造の中で、発生する弊害を事後的に救済するために実効性のある司法権が必要となる。
こうした三権の大きな枠組み・機能を再定義し、憲法に反映させることが必要である。
憲法と集団的自衛権との関係については、日本にとって極めて重要な判断を要することから、便宜的な解釈によって対応すべきではなく、正面から憲法改正により解決すべきだと考える。その際、国際法秩序の維持・発展という観点から、どのように日本の役割を規定していくかという議論を深める必要がある。
憲法改正の議論に当って、何より重要なことは、国民の参加意識である。憲法については、国民の基本的人権を守るため国家権力の発動を抑制するものであるとの考え方が強調されがちであるが、同時に、国民が主権者として国家の意思決定に参画することを保障するものである。国に対して、「口出しせずに放っておいてくれ」ということではなく、「みんなでやろう」という気持ちで参加していく意識がなければ憲法も活きてこない。
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(公正・透明で安全な仕組みづくり) |
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国民の国家に対する信頼を維持し、日本の国際的な信頼を高めるためには、日本が国際的な犯罪や脅威に対して断固たる態度で取り組み、また、公正で透明なルールを構築し、監視する体制を築くことが必要である。北朝鮮のミサイル問題や拉致問題に対する対応は言うに及ばず、サイバーテロへの対策、BSEや鳥インフルエンザへの対応、不法滞在外国人による凶悪犯罪の取締りなど、様々な取組を強化していかなくてはならない。
また、日本経済の健全な発展のためには、それを支える健全な市場の育成が不可欠である。金融市場の制度整備と不正監視・摘発を進めるとともに、行き過ぎた株主至上主義に陥ることのないよう、CSRや企業倫理などの重要性を強調したい。
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(国際法秩序の維持・発展) |
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グローバル化の進んだ今日の国際社会においては、ヒト・モノ・カネ及び情報の移動が活発になり、政治・経済・社会・文化等あらゆる分野において国境を越えた相互依存関係が強まっている。米ソ冷戦時代には、争いごとは戦争で解決するしか仕方がないという風潮があり、安全保障こそが国家の最大の課題であると考えられていたが、近年、様々な国際機関や条約が発展してくるにつれ、新たな国際法秩序の枠組みをどのように発展させていくべきかが課題として認識されつつある。
すなわち、単に自国の安全の確保だけでなく、人類が英知を傾けて発展させてきた国際法秩序をどう発展させていくのか。それに対して日本はどう対応していくのかとの問いが突きつけられている。世界第2位の経済規模を有する我が国として、主体的、戦略的に国際社会と関わり、国際法秩序の維持・発展に貢献していかなければならない。
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(エネルギー政策の戦略的展開) |
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昨今の原油価格高騰は、我が国や世界の持続的な経済成長にとって大きな脅威となりうる。この背景として、地政学的な不安定要因の高まりと、新興経済国をはじめとする世界的な需要の増大傾向がある。さらに、気候変動問題や核不拡散問題など、エネルギー政策の在り方に影響を及ぼしうる国際的な議論も活発化している。エネルギー政策は、大きな曲がり角に来ている。
エネルギーを巡る「新帝国主義」の到来を未然に防止するために、世界レベルでのエネルギー安全保障の仕掛けづくりを模索しなければならない。日米同盟を基軸としつつ、欧州、中国、インド、ブラジル、ロシア、サウジアラビアなど、世界のエネルギー政策の構築に責任と能力を有する主要国(ステイク・ホールダー)が集う「戦略的対話と協調のメカニズム」を新たに構築することにより、各国間のゼロサム型の不毛な対決を回避し、ひいては我が国のエネルギー安全保障の最適解を導きだせると考える。
日本は、二度の石油危機を乗り切り、世界でもっとも効率的な省エネルギー・新エネルギー国家を実現した。また、唯一の被爆国として、核不拡散にも留意した原子力政策を推進することで、エネルギー問題と気候変動問題の同時解決を進めてきた。いわば我が国は、人類共通のゴールである安定的で持続可能なエネルギー政策を実現するためのリーダーの資格が備わっている。
これまでのエネルギー政策路線を国内でしっかり維持しつつ、さらに上記のようなメカニズムの中で地球規模で発展させることが、日本と世界の共存共栄の戦略である。
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(環境問題への取組) |
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環境問題は、かつての産業型公害から、地球規模のものへと変化し、グローバル化した対応が求められるものとなっている中、日本が議長国となった京都議定書の締結のような地球規模での取組が推進されている。また、地球温暖化、オゾン層破壊、リサイクル、危険物質など、いずれの問題においても、イノベーションが重要な鍵を握っている。日本は環境技術において、世界の最先端を走っており、今後、環境分野で国際的、地球的な貢献ができる余地が大きい。まずは日本が率先して模範を示し、日本のシステムを世界に普及させることを通じて、環境問題における世界のリーダーを目指すべきである。
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(科学技術のフロントランナーとして) |
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人口減少社会と国際的大競争の中で、資源のない日本が魅力ある国であり続けるためには、技術革新で最先端を走り続けることが必要である。このため、人づくりにとどまらず、企業、大学、研究所などが常に技術革新を追求するインセンティブを持てるような社会を作っていくことが必要である。研究者が報われる仕組み作りや社会のニーズを研究ニーズに還元する仕掛けを考えていくことも必要であろう。
しかし、日本だけが科学技術で繁栄すればいいというわけではない。科学技術は人類共通の財産を築く知的活動であり、科学技術をつうじて世界をリードするとともに、国家の枠組みを越えて、世界に貢献できる国を目指すことを忘れてはならない。環境問題にとどまらず、人類が抱える様々な課題に答えるために科学技術は生かされるべきであり、そうした観点から日本の科学技術政策全体を見直していく必要がある。
環境、バイオ、宇宙、海洋、ナノテク等、人類が関わる領域が広がり、人類の価値観、倫理観が問われる時代にあって、いかに国境を越えた取組みを進めていくか。共同利用できる研究拠点作り、大学の更なる国際化、外国人研究者の受入れや日本での海外支援、更には科学者会議の主催、アジアの「知のネットワーク」作りなど、世界と関わる中で、人類共有の財産づくり、その信頼を担う世界のリーダー育成に貢献することこそ、日本の世界における存在感を高めることにつながる。
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(アジアにとっての日本の魅力) |
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アジア各国には多様な民族、宗教、文化、言語が存在し、政治体制や発展段階が大きく異なるが、日本の輸出、輸入の40%以上はすでに東アジア向けとなっているなど、近年、政治・経済・文化的な相互依存関係は緊密性を増している。
日本は現在でも、アジアの人々にとって魅力ある国である。日本の高い科学技術に裏打ちされた最新の電気製品(デジカメや薄型テレビ)や化粧品、鮨、天ぷら、ラーメン等の食物、日本の歌手やスポーツ選手、ファッション、九州の温泉や北海道の雄大な風景などは、多くのアジアの人を惹きつけている。
また、そうした物質的な魅力だけでなく、奈良・京都、仏教美術に表れているような、伝統に根ざした精神的な世界の魅力も多くのアジアの人々を惹きつけているのではないだろうか。すでに、日本はアジアに対し、日本人がフランスやスイスに感じる魅力に近いものを、発信しはじめているのではないか。日本人として、自分達がこうした魅力を発信していることに、まず自覚と誇りを持ってよいのではないだろうか。
アジアに向かって、こうした日本の魅力を更に発信していくためにはどうすればよいのか。例えば、アジアの次世代を担う若者に日本を曇りのない目で見てもらうことも有効だろう。一度でも日本に来たことがある人は、日本人が勤勉であること、日本が安全で暮らしやすい国であることがよく分かるはずである。アジアの学生を短期間自宅にホーム・ステイさせるような取組みを制度化し、促進していきたい。(「見てよ・行こうよ・学ぼうよ・日本」キャンペーン)
また、例えば、シンガポールの国立大学では、学生の一定割合を奨学金付きで海外から募集している。優秀な人材が卒業後シンガポールに残ることを目的とするものであるが、こうしたプログラムを日本でも取り入れることはできるのではないだろうか。(「学ぼうよ日本奨学金」)
私は、こうした取組みを進めることにより、アジアを中心とした諸外国からの留学生を、現在の12万人強から、2010年代初頭までに倍増させることを目指したい。これにより、アジアの未来を担う若者たちが切磋琢磨し合い、お互いの理解を深めてもらうとともに、日本の大学を知のるつぼと化し、世界の多様性の中で活躍できる人材を育てていきたい。
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(アジアとの「共生」) |
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今後の日本の外交にとって、引き続き緊密な日米関係が基軸であるべきことは当然である。自由主義、民主主義という共通の価値観に立つ同盟国として、両国の関係をこれまで以上に、真に発展・強化させていかなければならない。その上で、アジアとの共生は日本にとって極めて重要である。今後とも対話を通じ相互理解と相互信頼を深化させるとともに、ASEAN諸国などを戦略的パートナーとすることを含め、アジア域内の共通利益を拡大していくことが必要である。また、大国として近年ますます存在感を増してきているインドとの関係を深めていくことも重要である。
アジアは世界の中の成長センターとして注目を集めており、私の所管する通貨関係では、日本が中国人民元をどう見ているかについてしばしば米国から質問される。今後、アジアとのつながりを強め、「アジアのことは日本に聞けばよくわかる」と欧米から受け止められる関係を築いていくことが、日本の外交戦略として必要ではないかと思われる。また、現在、私はIMFにおけるアジア諸国の発言権向上のために、努力をしている。国際機関において、その中でのアジア諸国の地位や発言権の向上に努めることにより、日本のイニシアティブを高めていくというアプローチが重要ではないかと考える。
北朝鮮を巡る安全保障上の問題にいかに取り組んでいくかは言うに及ばず、近年、東アジアにおいて、首脳のリーダーシップの下、地域が一体となって取り組むべき問題は目白押しである。
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地震、津波、新型感染症等をどう予知し、予防していくか |
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域内の自由貿易をいかに推進していくか |
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エネルギー価格上昇の中、石油等の資源をいかに安定的に開発・確保するか |
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食料、環境問題にどう取り組んでいくか |
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世界的金利上昇の中で通貨危機の再発予防の枠組みをどう強化するか |
首脳同士が腹を合わせて時にはホットラインで話し合いつつ解決していく姿勢が重要である。
特に、中国、韓国とは、お互い欠くべからざる関係であることを認識し合い、東アジア全体の発展という大きな視点から、必要があればすぐに直接意見を交わせるよう、アジアホットラインを構築する必要がある。そうしなければ、諸問題の真の解決は望めない。
その障害になっているのは、靖国参拝問題である事は否定できない。靖国神社の問題は基本的に国内問題であり、日本が独自の立場で主体的に判断すべき事柄である。この判断に外国の意見を直接関連させるべきではないことは当然である。
この問題を考えるに当たり、さきの大戦について、我が国としてどう総括するか、今一度国民的な議論が必要であると強く感ずる。日本国民自身が歴史を振り返り、冷静に議論し、そこで得られる様々な事実や意見を咀嚼していくことが不可欠である。
靖国神社の問題は日本が主体的に判断すべき事柄ではあるが、その際、様々な点を総合的に判断することが必要である。日本の国益を考える上で、日本の外交もその中に含まれる。
あえて相手国の国内政治や国民感情を刺激しないよう配慮することは外交上必要であろう。また総理の立場にある限り、心の問題と行動の区別は海外では理解されにくいことも考慮しなければならない。
心の中で慰霊の気持ちを持つことは極めて大事で自然なことである。しかし、総理として行動することにより、対中・対韓関係を悪化させ、更にアジア地域において日本のイニシアティブを低下させることは避けなければならない。私は、このままでは、大きな国益を損なう恐れがあることを、国民に訴えたい。私は、総理になった時には、靖国参拝を控えるつもりである。
東アジアにおいて、首脳のリーダーシップの下、この地域が一体となって取り組むべき問題が目白押しであることを踏まえれば、中国、韓国にとっても、日本との関係改善は急を要すると考えられる。また、中国、韓国とはそれぞれ二国間の対話を進めるとともに、日中韓の三国のコモン・アジェンダを一緒に話し合い、アジア全体での取り組みに貢献していくとともに、二国間の対話の糸口にしていくという視点も重要である。
日本と中国、韓国との関係改善に近道はないと考えている。これからも生じてくる様々な問題に、双方が解決策を見出していくためには、それぞれの国民が様々なレベル、分野で交流し、お互いを理解していくことが基礎になる。両国がそれぞれ戦略的判断と健全なナショナリズム、言い換えるなら、自国の歴史や伝統に対するおおらかな自信を基礎とした相手国への理解が必要である。
幸い、日本と中国、韓国の民間レベルの交流は、これまでの歴史上最も盛んで深いものとなっている。首脳外交での関係改善が図られ、両国首脳が先頭に立って交流を促進することができれば、日本と中国、韓国の関係は未来を見据えた建設的なものとなっていく。それこそが首脳の責務である。
中国、韓国とは、隣国として長い歴史があり、これまでもいろいろな問題があり、これからもいろいろな問題が常に発生するだろう。しかし、お互いに欠くべからざる関係であることは避けようがない。首脳同士が腹を合わせて話し合い、未来に向けて解決していく姿勢こそが重要である。
国民の皆さんと一緒に、胆力を持って、アジア外交の正常化を目指していきたい。
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