政 策

 

 

総裁選立候補にあたって
 

(平成18年 9月8日(金))

 私は、本日、自民党総裁選に正式に立候補いたしました。

 7月27日に立候補の意志を表明して以来、私は、全国各地を回り、国民、自民党員の皆様と対話を重ねてきました。その中で、強く感じたことは、国民や自民党員の皆様の中には、実に多様な意見があるということです。

 過去の成功体験や既得権を破壊する場合には、的を絞り、異なる意見を切り捨てて、確固たる対応が必要な場面もあります。しかし、新たな社会を創造するためには、国民に幅広く意見を求め、それを「るつぼ」に溶かし、政策に反映させていかなければなりません。そうでなければ、議論が痩せ細ってしまうと危惧いたします。

 政治に課せられた最も重大な使命は、一言で言えば、「信なくば立たず。」国や政治への信頼を得ることであると考えます。

 そして、民主主義の原点は、税金について、国民が議論し、決めることです。国のリーダーたる者は、税金や財政について、具体的なビジョンを語る責任があります。

 自民党が、国民に開かれた政党として日本の将来を担っていくためにも、私は、総裁選を通じ、具体的な政策を語り、実りある論争を展開していかなければならないと思っています。

 私は、立候補を表明して以来、3つの懸念と決意を訴えてきました。

(1)

 第一に、首脳同士が会えない隣国との異常な関係を正し、アジアホットラインを構築すること。

(2)

 第二に、シャッター通りに苦しむ地域の本音を受け止め、地域の活力を本当に取り戻すこと。

(3)

 第三に、子や孫へツケの先送りを許さず、財政の立て直しに逃げずにぶつかること。

私は、これらの課題に全力を挙げて取り組みます。

 日本は今、人口減少社会の到来、世界的な競争激化という二つの構造変化にさらされています。小泉改革はこれに対応し、いわば「創造的破壊」を成し遂げたと言えます。

 しかし、「破壊」のあとには「創造」が必要です。改革が目指す先は、効率性だけを追求する弱肉強食の社会であってはなりません。日本人は昔から、「みんなでやろう」という気持ちを大切にしてきました。日本人が元来持っている「絆」の精神で、家族、社会、そして国と国民を結び直し、魅力にあふれた「活力と信頼の国家、日本」を創り上げたいと考えています。

 国民の皆様、自民党員の皆様の力強い御支援をお願い申し上げます。
 

 

『活力と信頼の国家』を創る
  〜「絆」の社会を目指して〜

(平成18年8月30日(水))

 
 本日、政権構想を表明いたしました。(要旨)(全文)としてまとめておりますので、そちらを御覧下さい。
  

― 谷垣禎一政権構想の公表にあたって ― 【談話】

 7月27日、私は、総裁選に立候補することを表明した。
その際、

(1)

首脳同士が会えない隣国との異常な関係を正し、アジアホットラインを構築する、

(2)

シャッター通りに苦しむ地域の本音を受け止め、地域の活力を本当に取り戻す、

(3)

子や孫へツケの先送りを許さず、財政の立て直しに逃げずにぶつかる

という3点について、私が抱いている懸念と決意を示した。
 

 本日は、これらの決意と一体のものとして、私が目指す経済社会の姿について、構想の全体像をお示ししたい。

 日本は今、内には人口減少社会の到来、外には世界的な競争激化という二つの構造変化にさらされている。

 小泉改革はこれに対応し、いわば「創造的破壊」を成し遂げたと言える。しかし、こうした破壊が、国民の不安を呼んでいる面もある。

 破壊の後には創造が必要である。次期政権の課題は、改革の先にある経済社会の姿を国民に示し、創り上げていくことである。

 私は、「人」、「社会」、「国のかたち」を戦略的に創り直し、魅力にあふれた「活力と信頼の国家、日本」を創りたい。

 改革が目指す先は、決して効率性だけを追求する弱肉強食の社会であってはならない。日本人は昔から、「みんなでやろう」という気持ちを大切にしてきた。日本人が元来持っている「絆」の精神で、家族、社会、そして国と国民を結び直していかなければならない。
という3点について、私が抱いている懸念と決意を示した。
 

(「人」をつくる)

 魅力ある国づくりの基本は、「人づくり」である。勤勉で、文化水準が高く、チームワークで力を発揮する、日本人のすばらしい特質を、最大限引き出すことが必要だ。そのため、次期政権は、教育の再生に真っ先に取り組まなければならない。

義務教育で子供の基礎的能力をきちんと引き上げるとともに、世界の舞台で活躍する人材を育てることが必要である。

また、家庭や地域が学校運営に積極的に参画し、地域の眼差しの中で子供を育てる工夫をしていくことが教育の質の向上につながる。

社会の支え手を増やすため、女性や高齢者が「生涯現役」で学んだり、働いたり、ボランティア活動をしたりと、地域社会で生き生きと活躍できるように、支援していきたい。

  

(「社会」をつくる)

 今、日本では家族や地域社会のありようが大きく揺らいでいる。お互いに支えあうことを基本とした家族観、社会観が崩れ、「勝ち組」、「負け組」という言葉に象徴されるように、社会を競争中心の対立構図で捉える意識が強まっているのではないか。

 しかし、社会は競争だけで成り立っているわけではない。誰もが、心の中のどこかに、世のため人のために働きたい、という気持ちを持っているはずである。私は、家族、地域の「絆」の中で、誰もが生き生きと安心して暮らせる社会を創りたい。

 そのためには、地域の活性化が不可欠である。

 「シャッター通り」という言葉に象徴されるように、地域が荒廃していては、良い国はできない。真に必要なインフラを整備し、大都会に吸い取られている地方税収の偏在を是正する。

 「地域の絆」を基礎に、独自性のある地域作りを積極的に後押しする。それにより、少子化対策、雇用対策、治安対策といった、様々な政策が、有効に機能していく社会を目指す。

 また、国民の「安心」の源である社会保障制度を、将来にわたり安定的に支えるため、私は逃げずに財政再建の議論をし、消費税率10%をはじめ、改革の具体像をみなさんと話し合いたい。

   

(「国のかたち」をつくる)

 私が目指す新しい社会では、政治や行政だけが「公」を担うのではなく、国民が積極的に「公」の役割を果たし、国家は国民の考えを適切に反映させ、方向性を決めていく。こうした国と国民が、信頼の「絆」で結ばれた「国のかたち」を創りたい。

 憲法改正の議論にあたっても、何より重要なのは、「みんなでやろう」という国民の参加意識である。合意形成のプロセスを重視し、国民的な議論を進めていく必要がある。

 国家に対する信頼の基礎は、安全の確保である。拉致問題やミサイル問題は言うに及ばず、国際的な犯罪や脅威に対し、断固たる態度で臨み、安全な社会を築いていかなければならない。

 また、世界第二の経済大国として、人類が英知を傾けて発展させてきた国際法秩序の維持・発展に主体的に貢献していくことが必要だ。

 エネルギー、環境、科学技術など、国際社会が直面する問題に対し、世界との共生を考えて取り組んでいくことにより、日本のイニシアティブを高めていきたい。特に、アジアにおけるイニシアティブを強化することにより、「アジアのことなら日本に聞こう」と思われる国を目指すべきである。

 そのためにも、アジア・ホットラインを構築し、アジア首脳外交の正常化に全力を尽くしていきたい。

  

(信なくば立たず)

 立候補表明後、各地方を回って感じたが、国民の皆さんの中には、じつに様々な意見がある。国民の多様な意見を受け止め、逃げずに政策論争を行うことが大切である。

 過去の成功体験を破壊する場合には、的を絞り、異なる意見を切り捨てて、確固たる対応が必要な場面もある。しかし、新たな経済社会を創造していくに当たっては、幅広く意見を求め、それを「るつぼ」に溶かして、その結果を政策に反映させていかなければ、議論が単線化し、痩せ細ってしまうのではないかと感じる。

 政治に課せられた最も重大な使命は、一言で言えば、「信なくば立たず」、国や政治への信頼を得ることである。そのための基本は、国民の皆さんに正直に向き合い、真実を語り、国民をあざむかないことだと考える。したがって、私は、今後、総裁選を通じて、国民の皆さん、自民党員のみなさんと正面から語り合っていきたい。

  

 

国民の皆さんと正直に向き合うために(5)
  
―皆さんからのご質問・ご意見に谷垣禎一が答える

(平成18年8月27日(日))

 
 今秋の自民党総裁選への立候補表明以降、国民の皆さんから、本当に数多くの激励、ご質問、ご意見などをいただいた。これからの日本をどうしていくか、一人ひとりの強い思いが伝わってきて、私自身あらためて皆さんに正直に語り、ともに考えていきたいと決意を新たにしている。

 今後、皆さんから寄せられたご質問、ご意見のうち、特に数が多かったものについてお答えしていきたい。

ご意見

 消費税を社会保障のための財源と位置付け、2010年代半ばまでのできるだけ早い時期に、少なくとも10%の税率とする、との主張であるが、社会保障の将来像についてはどのように考えているのか。年金、医療、介護などについて、どのような方向を目指すのか。

お答え

 日本は、戦後61年を経て、世界一の長寿社会を築き上げた。これは、日本が世界に誇ることができる成果である。健やかで充実した老後を送り、子や孫、ひ孫の世代が元気に育っていくのを見届けることは、人間として最も大きな幸せだと思う。
しかし、長寿化が進めば進むほど、老後の生活を支える収入基盤や、病気や寝たきりになった場合への備えなど、不安が大きくなることも事実である。安心して暮らせる成熟した長寿社会を築き上げていくためには、年金、医療、介護といった社会保障の役割が大きなものになっていかざるを得ない。
 国民の「安心」は、経済社会の活力の源泉であり、国家に対する信頼の基礎となるものである。世界に冠たる国民皆年金、皆保険制度は、この国民の「安心」を支える重要な基盤であり、今後とも、堅持しなければならない。
 世界には、北欧諸国に代表される「高福祉・高負担」の国もあれば、アメリカのような「低福祉・低負担」の国もある。現在の日本は、いわば「中福祉・低負担」とも言うべき状態にある。つまり、現世代が負担に比べて大きな給付を享受し、その差を、日々刻々、将来世代に先送りしているということだ。このようなやり方が、いつまで続けられるものなのか、という疑問が、社会保障制度に対する国民の不安の背景にあるのではないだろうか。
 私は、社会保障の分野で、アメリカのような「小さな政府」は目指すべきではないと考える。同時に、将来に負担を先送りし、子や孫の世代に不安を残すような社会保障制度であってはならない、と考えている。今後、高齢化の進展に伴い、世代間・世代内の公平を図りつつ、国民が真に必要とする給付については、これを将来にわたり確保していくということが極めて重要な課題である。このため、必要な給付の水準と財源の関係について、現実を直視しながら、きちんと考えていかなければならない。
 このような考え方を踏まえ、私は、消費税を社会保障のための財源として明確に位置付け、2010年代半ばまでのできるだけ早い時期に、少なくとも10%の税率とする必要がある、と述べてきたのである。

 年金制度は、老後の生活を支える大切な仕組みである。平成16年の年金制度改革により、長期的な給付と負担の均衡を確保する枠組みが構築されたが、残された課題が大きく言えば二つある。
 第一に、基礎年金の国庫負担割合の引上げである。先般の年金改革において、税制改革により安定した財源を確保し、平成21年度までに国庫負担割合を2分の1まで引き上げることを国民に約束した。このことは、年金改正法にも規定されている。私は、消費税を含む税制改革に正面から取り組むことにより、これを実現しなければならないと考える。なお、基礎年金を全額税財源で賄うべき、との議論があるが、受益と負担の関係を明確にし、モラル・ハザードを招かないようにするため、主要諸外国にならい、社会保険方式を維持することが適当である。
 第二に、年金制度を安定的に支える前提として、少子化に歯止めをかけるための抜本的な対策が必要である。少子化の原因として晩婚化が挙げられるが、現実に生涯結婚しないことを望む若者は非常に少ない。それでは、なぜ彼らは結婚に踏み切らないか。若者が置かれている労働環境をみれば、安定した仕事に就いているが深夜まで働くことを余儀なくされる方がいる一方で、不安定な仕事にしか就けず、家族を養っていけるだけの経済力が得られない方が多い。これでは結婚からは遠ざかるばかりである。長時間労働をいかに減らしていくか。安定した雇用機会をいかに提供するか。若者の労働環境の改善が少子化への対応の第一歩である。あわせて、「子宝税制」の導入、不妊治療に対する保険適用範囲の拡大、「地域子育てセンター」の設置など、総合的な少子化対策を推進していく必要がある。
このほか、被用者年金制度の一元化や社会保険庁改革を着実に実施し、年金に対する国民の公平感、信頼感を確保しなければならない。

 医療については、国民が、全国どこでも必要な医療の提供を受けられるようにすることが必要である。
 医療費の水準は、高齢化の進展の影響を強く受ける。医療保険制度が国民にとって必要な役割を将来にわたり果たし続けるためには、公的保険でカバーすべき範囲、つまり、国民の保険料や税金の負担で賄う範囲をどこまでとするか、自助で対応していただくべき範囲をどうするかなど不断に点検を行うことは避けられない。経済力のある方には、もう少し自助努力をお願いしていかなければならないこともあると思う。しかし、所得の少ない方にはしっかりと配慮しなければならない。また、国民に自助努力をお願いする上では、自助努力を後押しする税制上の支援措置なども充実させていく必要がある。
 現在、医療の担い手である医師の地域間、診療科間の偏在が大きな問題となっている。地方における医師不足、小児科・産科の医師不足は看過できる状態ではない。どこに住んでいても、命や健康の大切さにかわりはない。全国どこでも安心して必要な医療の提供を受けられるよう、地域の取組を促すとともに、国として、制度、予算、診療報酬等様々な側面から医療提供体制の整備に全力を挙げて取り組んでいかなければならないと考える。

 介護については、昨年の改革において、介護予防の推進など、制度発足以来、初めてとなる大幅な見直しを行った。今後とも、地域や家庭の機能との調和も念頭に置きつつ、真に必要な部分に資源の集中投入を考えていく必要がある。その際、自助努力を支援するための税制などの仕組みや、ボランティアの積極的な活用も考えていかなければならない。

 高齢者が、支えられる側から支える側にまわれば、持続可能な社会保障制度を築く上で大きな力となる。働く意欲と仕事をする能力がある高齢者の方々には、できる限り長く働いていただく、「生涯現役」が可能な社会を目指していくべきである。そのためには、労働政策の面で、「年齢に基づく処遇」の改革と、高齢者自身の能力開発の支援が必要である。具体的には、定年制の廃止を見据えて70歳までの雇用確保措置を徹底し、企業の雇用インセンティブを高めるため、年功型賃金を改めて貢献度に応じた賃金体系を広めるべきである。
 また、企業が退職間近の社員の能力開発費用を積極的に増加させた場合に法人税を軽減することにより、社会の支え手を増やす企業の努力を国も前向きに支援することが必要である。高年齢者の能力開発のための各種助成制度も思い切って拡充しなければならない。
 高齢者が実際に働き続けられるよう、生活習慣病対策等により健康寿命を延ばしていくことも重要だ。
 こうした施策を通じて、60歳から64歳までの高齢者の労働力率(働いている方の割合)を、今後20年間で、男性で現在の70%から85%に、女性で40%から60%に引き上げていきたい。

 国民の安心を確保し、将来世代に持続可能な社会保障制度を引き継いでいくために、長期的な視野に立ち、給付と負担のバランスを意識した制度を創り上げていきたいと考えている。

 

 

国民の皆さんと正直に向き合うために(4)
  
―皆さんからのご質問・ご意見に谷垣禎一が答える

(平成18年8月19日(土))

 
 今秋の自民党総裁選への立候補表明以降、国民の皆さんから、本当に数多くの激励、ご質問、ご意見などをいただいた。これからの日本をどうしていくか、一人ひとりの強い思いが伝わってきて、私自身あらためて皆さんに正直に語り、ともに考えていきたいと決意を新たにしている。

 今後、皆さんから寄せられたご質問、ご意見のうち、特に数が多かったものについてお答えしていきたい。

ご意見

 少子化対策についてはどう考えているのか。子宝税制を提案しているようだが、総合的な対策が必要ではないのか。

お答え

 現代の日本においては、家族や地域社会のありようが大きく動揺している。個人のライフスタイルが多様化し、核家族化、都市化や過疎化が進行、相互扶助を基本とする伝統的な家族観、社会観が崩れ、新たな価値観を見出せずにいる。

 その結果、子育て、教育、お年寄りの介護、そして身の回りの安全確保などが非常に難しくなってしまった。家族、地域社会の「絆」の中で、人々がお互いを尊重し、支え合っていく。そうした「絆」の中で、人を育て、地域を守り、国をかたちづくるということがなければ、人口減少、少子高齢化社会の中で、経済社会のシステムを維持・運営することはできなくなってしまう。

 少子化対策は、直ちに官民を挙げて全力で対応していくべき課題である。その際、もちろん子供を産み育てやすい仕組みを整備することは重要であるが、次世代の国民を立派に育てていくこと、それ自体が素晴らしい営みであるという価値観を社会全体が実感し共有していなければ、せっかく築いた仕組みも「絵に描いた餅」になりかねない。こうした国民全体の意識の面に国として働きかけることも必要である。

 制度や仕組みを考える際も、多少の予算を付けるといった場当たり的な対策ではなく、地に足を着けて、なぜ子供を産めないのか、もしくは産まないのかという、本質に迫らなければ実効ある対策を講じることはできない。

 少子化の原因として晩婚化が挙げられるが、現実に生涯結婚しないことを望む若者は非常に少ない。それでは、なぜ彼らは結婚に踏み切らないか。若者が置かれている労働環境をみれば、安定した仕事に就いているが深夜まで働くことを余儀なくされるものがいる一方で、家族を養っていけるだけの経済力が得られない不安定な雇用にしか就けない者がいる。これでは結婚からは遠ざかるばかりである。長時間労働をいかに減らしていくか、安定した雇用機会をいかに提供するかという労働問題の解決が少子化への対応の第一歩である。

 バブル崩壊による雇用悪化のしわ寄せを最も受けたのは、「若年者」である。15〜24歳層の完全失業率は2003年に10%を超えた。また、限られた雇用機会の多くは、不安定で労働条件の悪い非正規労働となった。こうした状況の中で生じた、フリーター、ニートといった問題にみられるように格差の固定化は人々の生きる意欲を低下させるものであり、それを防ぐことは重要な課題である。

 現在、企業が積極的な人材確保に動き出し、来春の新卒採用数がバブル期並みになるなど、若年者の雇用改善の動きが明確になっている。雇用の「量」の拡大に加え、雇用の「質」を向上させる絶好のチャンスが到来したといえる。この機会を捉え、新卒者だけでなく、就職氷河期に希望する就職に恵まれなかった世代も含めて、「フリーター25万人常用化計画」などにより安定して雇用機会を提供する。また、機会があっても就職に踏み切れないニートに対しては「若者自立塾」「地域若者サポートステーション」等により、きめ細かな対応をしていくべきである。

 こうした若年者の雇用の「質」の改善とともに、パートや派遣といった非正規労働と正規労働の労働条件の均衡を図ることも課題である。この問題は、主に女性に関わる問題であったが、男性でも10人に1人はパートであり、非正規労働者の労働条件向上には強力な対応が求められる。

 子供を望んでいる夫婦は多く、その数は最低でも2人という夫婦がほとんどである。しかし、不妊症により望んでも子供ができない夫婦がいる。こうした方々については、不妊治療に対する保険適用の範囲を拡大することや、不妊治療に対する周囲の理解を深めることなど、不妊治療を受けやすい環境の整備が必要である。

 また、育児休業がとりやすく、子供を産んでも安心して元の職場に戻れるなど出産・育児によって女性がキャリアパスの大きな変更を強いられることのない職場構造の実現を図り、企業とともに「ママさんのいる職場キャンペーン」を展開していくことが必要である。

 公立の学校が荒廃して、私学に入れるのに何百万円も払わなければいけない場合には、何人も子供を産むということ自体非現実的のように思われる。こうした現実に対応するため、一人ひとりの子供の学習ペースを細かく把握し、それに応じて設定された「一歩前進カリキュラム」といったものを丁寧に与え、指導することによって、塾に通わなくても子供の能力を最大限に伸ばしてくれる公的教育の充実が不可欠となる。

 また、核家族化など社会の変化を踏まえた育児支援を行うことも重要である。例えば、地域団体、医療機関、警察、行政等により子育て支援のネットワークを組織し小学校区ごとに「地域子育て支援センター」の設置を行っていき、育児に対する不安を地域全体で和らげることができる。何より、地域全体で子供を育てるという発想が重要である。

 税制改革の中でも、子育て世帯に支援を集中できるよう、「子宝税制」を導入することが考えられる。所得税を納めている子育て世帯については、高額所得者ほど有利になっている現在の扶養控除を見直し、所得が低い子育て世帯により手厚く配慮できる税額控除の仕組みを導入する。また、所得税を納めていない子育て世帯には、児童手当により支援を行う。税制面と歳入面とを一体的に捉え、子育て支援を切れ目のないものとすべきである。

 実効ある少子化対策を進めていくには、夫婦、若者、女性の声に耳を傾け、様々な要素を一つずつ検証し、国、地方自治体、企業が連携し、対策を講じていかなくてはならない。

 

 

国民の皆さんと正直に向き合うために(3)
  
―皆さんからのご質問・ご意見に谷垣禎一が答える

(平成18年8月18日(金))

 
 今秋の自民党総裁選への立候補表明以降、国民の皆さんから、本当に数多くの激励、ご質問、ご意見などをいただいた。これからの日本をどうしていくか、一人ひとりの強い思いが伝わってきて、私自身あらためて皆さんに正直に語り、ともに考えていきたいと決意を新たにしている。

 今後、皆さんから寄せられたご質問、ご意見のうち、特に数が多かったものについてお答えしていきたい。

ご意見

 消費税率引上げの前に、まず徹底した歳出削減を行うべきではないか。なぜ、消費税率を10%に引上げる必要があるのか。今、議論するのは時期尚早ではないか。食料品等については、税率を引き上げずに済ませられないか。

お答え

(消費税率引上げの前に、まず徹底した歳出削減を行うべきではないか。)
 
まず、徹底した歳出削減に取組むべき点については、当然のことであり、そうしなければ国民の皆さんからの理解は得られない。これまで、小泉政権において、公共事業費をピーク時の約半分に削減するなど総額13兆円を超える歳出改革が既に進められてきた。また特殊法人向けの財政支出を約1.8兆円削減するなど、行財政改革にも力を注いできたほか、予算の無駄を排除するために、これまで200事業にわたり予算の使われ方をチェックする予算執行調査を行い、それらの成果を予算に反映する努力も行っている。
 更に、先般の「骨太の方針2006」においては、2011年度までに国・地方の基礎的財政収支の確実な黒字化(その年に受け取った税収でその年の政策を行うことが可能となる水準)を達成するために必要な16.5兆円の対象額のうち、7割〜9割程度に当たる額の歳出削減を行うことを明記している。
 具体的には、今後5年間の歳出改革として、各分野においてこれまでの改革努力を継続することを基本に、歳出削減の大きさを明示している。例えば、公共事業については、更に5〜15%の削減を行い、ピーク時の概ね4割程度の水準にまで引き下げるほか、公務員の人件費についても、今後、5%を超える人員削減と給与の見直しにより、2.6兆円の削減を図ることとしている。また、今後高齢化等で増加が見込まれる社会保障についても、これまで5年間の医療、年金、介護等の各般の制度改革による伸びの抑制を踏まえ、今後も改革努力を継続し、国・地方合わせて1.6兆円の抑制を図ることとしており、合計で11.4〜14.3兆円程度の歳出削減を行うこととしている。これらの歳出削減は、いずれの分野においても厳しい内容であり、国民生活への影響も十分に吟味し、国民の理解を得ながら進めていかなければならないが、この方針に沿って着実に進めていく必要がある。
 また、歳出改革に加え、@国の資産・債務をスリム化する改革、Aこれまで非効率との批判のあった特別会計の改革などを推進していく。資産・債務改革では、国の資産を約140兆円規模で圧縮し、資産の対GDP比を今後10年間で概ね半減させていく。特別会計改革では、現在31ある特別会計の数を1/2から1/3に減らし、明治以来最少にするとともに、特別会計の持つ資産・剰余金等をスリム化することで、今後5年間で合計20兆円規模の財政健全化への貢献を図ることとしている。こうした改革は、行政改革推進法が成立し、既に道筋がつけられているが、これを着実に実行していかなければならない。
 また、公務員の給与については、この夏の人事院勧告においても、公務員給与の比較対象とする企業規模を、従来と比べてより小規模の企業に広げることとしており、抑制に向けた取組みを進めている。
 特に皆さんから不満の多い社会保険庁のあり方については、社会保険制度に対する国民の信頼を回復することが何より重要であり、それにふさわしい運営組織に一新することが大切である。そのため、不正免除問題について、関係者に対する厳正な処分を行うことが重要であり、仮に処分を受けた者が、そのまま安易に新組織に任用されるのであれば問題である。いずれにしても、人事も含め、これ以上不祥事を起こさないための取組を徹底し、体質を改め、新たな組織に移行させるという社会保険庁改革を断行することが必要である。
 このように、行財政改革を更に進め、非効率な歳出を厳しく見直すことは、当然に行っていくべきことであり、厳しい内容であっても、徹底してやり遂げるべきと考えている。

 しかし、私は、こうした歳出削減を行った後でなければ消費税率の引上げができないという議論には賛成できない。
 財政を健全化するために、残された時間が余りないということがその理由である。
 日本では、高齢化の進展とともに貯蓄率が著しく低下(1975年度23.1%→2004年度2.8%)してきている。更に2010年〜2015年頃にかけて、団塊世代が年金受給者となることが見込まれている。これまで国債を国内で消化できてきた環境が大きく変わってきており、低金利を支えてきた潤沢な国内の貯蓄を当てにできない。いやでも日本の国債を海外の投資家に買ってもらわざるを得なくなる。既に、国際的に金利上昇局面に入っており、このまま国の規模に比して過大な債務残高を抱え、財政健全化の道筋を世界の市場に示すことが出来ずに、市場の信認を失えば、長期金利が上昇し、経済にも大きな影響を及ぼしかねない。

 財政健全化の最大の眼目は、債務残高の対GDP比を引き下げることにある。つまり、国債の残高が金利によって雪ダルマ式に増えていかない、経済規模と比べて徐々に減っていきますよ、ということを示すことである。2011年度に基礎的財政収支を黒字化するという目標は、財政健全化の一里塚に過ぎない。何故なら、最近の各国の統計から見て、経済成長率より、金利の方が高いケースが多く、国債の残高が金利によって、経済規模を上回り、膨張していってしまうからである。したがって、「骨太の方針」でも2010年代半ばまでに債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げる必要を示している。

 「骨太の方針」では、名目成長率3%というかなり堅調な経済の状態が継続することを前提にしている。財政の健全化のためには、経済が堅調に成長していくことが不可欠であり、経済成長戦略を実行していかなければならない。その前提に立った上で、厳しい歳出削減を行っても、「骨太の方針」では、2011年度に基礎的財政収支の黒字化のためには、何らかの増収措置が必要としている。
 また、2009年度までに基礎年金国庫負担割合引上げ(1/3→1/2)を行うための財源は、2007年度を目途に税制改革を行って確保することが法律上定められている。
 これらに必要な増収措置は、2011年度時点で消費税に換算すれば1〜2%であるが、ここには、少子化対策などの今後かなりの支出が見込まれる政策の経費分は含まれていない。
 しかし、最も重要であり、是非とも必要なことは、2011年度単年度における目標が達成されさえすればよいというのではなく、世界の市場に対して、日本の財政の健全性を示すために、2010年代半ばまでの道筋をきちんと明示していくことであると考えられる。したがって、これを展望して税制改革の姿を示していかなくてはならない。

 
(なぜ、消費税率を10%に引上げる必要があるのか。) 
 なぜ、消費税率を10%に引上げる必要があるのか、というご意見は多くの方々から頂戴している。
 現在、国の歳出のうち、国債の利払いを除くと、半分近くは、年金、医療、介護等の社会保障関係費である。財政健全化のためには徹底した歳出削減に取組むべきことは言を待たない。しかし、社会保障関係費については、削れば削るほど良いという性格のものではない。
 社会保障関係費は、制度の見直しを進めるとしても、高齢化の進捗に伴い、国・地方ともに益々増大すると見込まれている。2011年以降、団塊の世代の定年が進むことによってこの傾向は顕著になる。また上述したように、基礎年金の国庫負担割合を2分の1まで引き上げるための安定した財源を確保しなければならないし、今後、国を挙げて少子化対策に取り組むための経費も必要になってくる。
 このような社会保障関係費を、次世代に負担を先送りすることなく、安定的に支えていくための財源を確保することは大きな課題であり、早急に手を打つ必要がある。
 我々は、互いに支え合う「社会」の中で生きている。支え合うということは、弱者を支えるために、国民皆で負担するということであり、これがまさに社会保障の役割である。私は、国民の安心を確保し、信頼と活力ある経済社会の基礎を築いていくためには、将来的にも充実した社会保障制度を維持・堅持していくことが不可欠であると考えている。
 私は、政治家として、消費税を社会保障制度の安心を維持するための財源と明確に位置づけ、2010年代半ばまでのできるだけ早い時期に、少なくとも10%の税率とする必要があると考える。これは、2011年度までに基礎的財政収支を黒字化することに加え、2010年代半ばに債務残高GDP比を安定的に引下げるための財源、更に、少子化対策等に必要な財政需要を考慮すると、少なくとも10%の税率が必要となるからである。
 消費税は、少子化が進む中で勤労世代に負担が集中せず、国民全体で広く公平に負担するという税金であり、社会保障の財源として最も適している。社会経済情勢の変化等を踏まえて、所得税や相続税なども含め、税体系全体のバランスのとれた見直しを行う必要がある。活力と信頼の社会を支える税財政のグランドデザインが必要である。


(今、議論するのは時期尚早ではないか。)
 2010年代半ばという10年先の話を、今決める必要はないのではないかとのご意見もある。
 前述のように、基礎的財政収支の黒字化は改革の一里塚に過ぎず、債務残高GDP比を安定的に引下げることが財政健全化の本質であり、過大な債務残高GDP比は、それ自体が、国際的市場における日本のリスク要因である。日本が財政健全化への中長期的な方向性を提示しなかった場合、国際的市場から見放されるおそれがある。小泉内閣でも当初から、2010年代初頭までに基礎的財政収支の黒字化を実現するとして、10年先の目標を示した。
 また、2011年度以降においても、社会保障費が伸びて行くのは確実であるにもかかわらず、2011年度までの議論、基礎的財政収支の黒字化までの議論に限定し、消費税率の引上げの必要性がないか、もしくは税率の引上げが小幅で足りるかのような印象を与えるのは、国民に対して正直に向き合うことにならないのではないかと考える。政治家が消費税の問題について逃げずに議論することが必要である。


(食料品等については、税率を引上げずに済ませられないか。)
 
消費税率を10%に引上げた場合、食料品等に対して軽減税率を導入すべきだとする主張に対しても、数多くのご意見を頂戴しており、重要なご指摘であると考えている。
 しかし、軽減税率の導入については、事業者の事務負担の増大に加えて、様々な問題があり、慎重に検討しなければならない。
 食料品等の低所得者の家計に占める消費割合が高い品目を軽減税率の対象とする場合には、低所得者の負担も緩和するが、同時に、高所得者も同様に負担緩和の効果が及ぶことになる。私は、低所得者への配慮であれば、軽減税率を導入するのではなく、むしろ、社会保障を充実させることにより、低所得者の方々に重点的に配慮する政策を考えるべきだと思っている。軽減税率を設ければ、それだけ標準税率を高くせざるを得ないことも念頭に置く必要がある。


 消費税の引上げは、国民の皆さんにとって厳しい負担になることはもちろん承知しているし、引上げの実施については、経済の状況を十分に踏まえることも当然必要と考える。増税は誰もが避けたいものである。しかし、だからといって厳しい議論を先送りしていたのでは、子や孫の世代に対する責任を果たすことはできない。日々刻々ツケが先送りされている状態から、抜け出すための努力が、私たち現役世代に課せられているのではないだろうか。

 

 

国民の皆さんと正直に向き合うために(2)
  
―皆さんからのご質問・ご意見に谷垣禎一が答える

(平成18年8月16日(水))

 
 今秋の自民党総裁選への立候補表明以降、国民の皆さんから、本当に数多くの激励、ご質問、ご意見などをいただいた。これからの日本をどうしていくか、一人ひとりの強い思いが伝わってきて、私自身あらためて皆さんに正直に語り、ともに考えていきたいと決意を新たにしている。

 今後、皆さんから寄せられたご質問、ご意見のうち、特に数が多かったものについてお答えしていきたい。

ご意見

 地域の活性化のために具体的には何が必要だと考えているか。国と地方との関係についてどうするのが望ましいと考えるか。

お答え

 健全な地域社会がなければ健全な国はない。「シャッター通り」という言葉に象徴されるように、地域が滅びれば、それは国の荒廃につながっていく。
 地方を回り地元の声に耳を傾けると、いかに大都会に富を吸い寄せられ、将来展望が描けない地方・地域が多いことか。地域の本音を受け止め、地域の活力を本当に取り戻すことが、今こそ求められている。
 このような地域をもう一度立ち直らせるためには、従来型の財政出動に頼るのではなく、地域の住民が自ら創意工夫を凝らし、魅力と活力のある地域を実現することが重要である。そのために、私はあらゆる角度から対策を講じていきたい。その中でも、私は以下の4つの取組が、今後の重点課題になると考えている。

 一つ目の課題は、地域の人材発掘・育成である。地域の経済社会を活性化させるためには様々な取組の核となる人材を得ることが不可欠である。地域で優秀な人材を育て、その人材をその地域で活躍させる、また他の地域から人材を惹きつけるにはどうすれば良いのか。地域社会が教育により深く参画する、地域の企業などでの職業体験を通じて子供たちに自分のふるさとへの思いを強く植え付ける、地域の大学等と連携する中からその地域に根を下ろす若者を育てる、そして特に重要なのは、女性と高齢者の力を引き出すことだろう。女性、高齢者は地域に根を張り、地域に対する問題意識も高く、貴重な戦力となり得る。

 まず、女性については、20代後半から30代にかけて働き続けることをやむを得ずあきらめる方が多い。育児休業がとりやすく、職場復帰しやすい環境を整備する。また、育児が一段落して再就職を希望する場合、再就職先としてはパート、派遣などが多くなる。非正規労働と正規労働の労働条件の均衡をいかに図っていくかが課題である。

 高齢者が、支えられる側から支える側にまわれば、持続可能な社会保障制度を築く上で大きな力となる。したがって、働く意欲と仕事をする能力がある高齢者の方々には、できる限り長く働いていただく、「生涯現役」が可能な社会を目指していくべきである。そのためには、労働政策の面で、「年齢に基づく処遇」の改革と、高齢者自身の能力開発の支援が必要である。具体的には、定年制の廃止を見据えて70歳までの雇用確保措置を徹底し、企業の雇用インセンティブを高めるため、年功型賃金を改めて貢献度に応じた賃金体系を広めるべきである。また、社会保障政策の面では、高齢者が実際に働き続けられるよう、生活習慣病対策等により健康寿命を延ばしていく。こうした施策を通じて、60歳から64歳までの高齢者の労働力率(働いている方の割合)を、今後20年間で、男性で現在の70%から85%に、女性で40%から60%に引き上げていきたい。
 また、高齢者が地域社会の中で生き生きと活躍できるようにするには、必ずしも雇用という形にとらわれる必要はない。教育、スポーツ指導、育児、介護など様々な場面でボランティアの形で地域社会に貢献していくことができる。このため、こうした活動をサポートする拠点づくりや、新たな資格の創設、税制上の支援措置等を通じて、地域のNPO等のボランティア活動を活発化させ、シルバー人材センターのマッチング機能の強化により、高齢者のノウハウを地域において活用しやすい環境を整備することが求められる。

 二つ目の課題は、地域の自然、歴史、伝統、文化、風土といった地域の良さの再発見・活用である。日本全国それぞれの地域は、それぞれに素晴らしい魅力に溢れているが、その魅力を地域活性化のために十分に活かしきれていないところも多い。地域の人々が自ら自分たちの住む地域の魅力を再発見し、それを活性化の資源と明確に位置づけ、「まち自慢むら自慢運動」として、戦略的に外に向かってにアピールしていかなければならない。

 三つ目の課題は、地域の産業・企業の振興である。言うまでもなく、地域の活性化のために、経済的な基盤の確立は極めて重要である。地域の人材、資源をフル活用して、地域の産業・企業を振興し、地域住民の雇用、所得を確保することは、活性化にとって不可欠である。このために、真に必要となるインフラの整備も考えていく必要がある。 

 四つ目の課題は、地域コミュニティーの再生である。これは、上述の3つの取組全ての基礎であり、「地域の絆」の再構築そのものでもある。教育、子育て支援、高齢者介護、防犯、更には経済活動についても、地域に住む人々が有機的に支え合っていくことは、社会・経済の効率の面からも、人々の精神的な充実の面からも重要である。

 例えば、農村など一次産業の盛んな地域において、農道や農業用水の更新や維持管理に農業の担い手と地域住民とが一体となって取り組むことにより環境整備を図っていく。そうした地域の振興策を強化することで産業基盤とコミュニティーの双方を確かなものにしていくことが考えられる。

 また、自治体やNPO等が主体となって「絆銀行」といったものをつくるというアイデアもあるのではないか。これは、地域の小学校での課外授業や社会人向けのコミュニティースクールでの講師、ベビーシッティング、幼児の一時預かり、高齢者介護、防犯パトロール等に費やした時間を「絆銀行」に預金し、預金者がその後子供を預かってもらったり、介護を受けたりする際には、この預金を取り崩して支払うといった一種の地域通貨のような仕組みである。

 私は、こうした地域における活動の担い手、受け皿を育てていく観点から、NPOや財団等に対する寄附金税制を抜本的に見直していきたい。例えば、寄附金優遇税制の対象となる認定NPO法人の認定期間の延長、個人住民税の寄附金控除の対象や金額制限の緩和、住民の方々が主役となって「コミュニティー計画」を策定し、地域を活性化させるための公共的な活動に取り組まれる際に、こうした活動に対して寄附をした個人や企業が所得税や法人税等の優遇措置を受けられるような仕組み作りなど、いわば「『絆』の税制」といったようなものの導入を提案したい。これにより、小さな善意も大切にし、世のため人のために志をもった人が働きやすい税制に変えていきたい。

 国と地方との関係を考えるに当たり、まず国と地方を合わせた公的部門全体が果たすべき役割について検討し、簡素で効率的な政府の実現に向けて取り組む必要がある。
 その上で、国と地方の役割分担については、「地方にできることは地方に」という原則の下で、

 

国は、国家存立にかかわる事務や、全国的な規模または全国的な視点に立って行わなければならない施策など、国が本来果たすべき役割に重点化し、

 

それ以外の事務については、個々の国民にとってより身近な存在である地方公共団体において、各地域の住民のニーズに即した形で効率的な行政サービスを提供する、

 

ことが望ましいのではないかと考える。
 これまでの三位一体の改革により、事務事業や財政負担に関する国と地方の役割や責任の分担が見直され、改革全体としては、一定の前進があった。今後は、18年度までの成果を踏まえつつ、国と地方の役割分担を念頭において、真に地方の自立と責任を確立するためには何が必要であるかを、よく議論していかなくてはならない。
 その際、二つの点に留意が必要であると考えている。
 第一に、我が国においては、支出ベースでの国と地方の比率が約4:6となっており、連邦制の国は別として、先進諸国と比べて地方政府の果たす役割が大きいという特徴がある。他方、地方の歳出については、まだまだ国による義務付けや基準付けが行われているものが多く、地方分権に向けて地方の創意・工夫が生かせるよう、地方に対して権限の移譲がより積極的に行われる必要がある。
 第二に、地域の活性化において、地方自治体の果たす役割は特に重要である。しかし、地方の個々の自治体を見ると厳しい状況が続いており、地方での不安感に拍車をかけている。増収で潤う都市部の自治体とそれ以外の自治体とで税収の偏在が生じていることが原因である。税源移譲を進めることにより地方自治体間の財政力格差が広がることが避けられず、税収の偏在という問題を多くの自治体が感ずるようになってきている。国の厳しい財政事情と既に全体として地方へかなりの財源移譲が行われていることを踏まえれば、地方自治体の間で、税収の偏在性是正に取り組むことが現実的である。

 このため、個人住民税については、かなりの部分を「ふるさと共同税」とする提案をしたい。「ふるさと共同税」は、個人住民税の一定割合を、人口等のわかりやすく客観的な基準に基づき、地方自治体間で配分するものである。また、税収の一部について納税者が配分先の自治体を指定できる仕組みも考えられる。これにより、税収の偏在を縮小し、都市と地方とがお互いに対立し合う関係ではなく、支えあっていく関係を築くことを目指すものである。
法人住民税と法人事業税の地方自治体間の配分を見直すとともに、地方交付税の配分方法について見直し、小さくても努力する自治体が報われる仕組み、恣意的でない透明な仕組みを創り上げなくてはならない。

 

国民の皆さんと正直に向き合うために(1)
  
皆さんからのご質問・ご意見に谷垣禎一が答える

(平成18年8月15日(火))

 
 今秋の自民党総裁選への立候補表明以降、国民の皆さんから、本当に数多くの激励、ご質問、ご意見などをいただいた。これからの日本をどうしていくか、一人ひとりの強い思いが伝わってきて、私自身あらためて皆さんに正直に語り、ともに考えていきたいと決意を新たにしている。

 今後、皆さんから寄せられたご質問、ご意見のうち、特に数が多かったものについてお答えしていきたい。

ご意見

 靖国神社参拝を外交問題にすべきではないのではないか。靖国問題をどうすべきと考えているか。対中国、韓国との外交問題にどう取り組んでいくつもりか。

お答え

 靖国神社の問題は基本的に国内問題であると私は考える。日本が独自の立場で主体的に判断すべき事柄である。この判断に外国の意見を直接関連させるべきではないことは当然である。
 この問題を考えるに当たり、さきの大戦について、我が国としてどう総括するか、今一度国民的な議論が必要であると強く感ずる。日本国民自身が歴史を振り返り、冷静に、議論をし、そこで得られる様々な事実や意見を咀嚼していくことが、不可欠である。
 靖国神社の問題は日本が主体的に判断すべき事柄ではあるが、その際、様々な点を総合的に判断することが必要である。日本の国益を考える上で、日本の外交もその中に含まれる。

 靖国神社のあり方について、考えを述べることは、政教分離の観点から、国会議員としては抑制的に対応すべきであると考える。
 靖国神社がこれまで日本人の慰霊の中心施設であったことは間違いないが、今後とも日本人の慰霊の中心施設であり続けるのか、それが可能かは、靖国神社にボールが行っていると考えている。しばらくは靖国神社の対応を見守りたい。

 日本にとってアジア諸国の重要性は言うまでもなく、各国の首脳がいつでもすぐに語り合うことが出来るようにすることは、日本の外交にとってますます必要になってきている。特に中国、韓国とは隣国であり、お互い欠くべからざる関係になってきている。相手国の国内政治や国民感情をあえて刺激しないようにすることは外交上必要である。

 中国、韓国との外交関係を考えると、A級戦犯の合祀問題はのどに刺さった棘である。極東軍事裁判は法的には問題があったにせよ、第一次大戦の戦後処理の問題点を教訓に、さきの大戦の政治的な決着の方法として、日本が受け入れたものであると考えており、A級戦犯が合祀された靖国神社に総理が参拝することは、外交的に説明しづらいものとなっている。
 小泉政権は、当初、積極的に中国、韓国との関係改善、東アジア外交に力を入れ、着実な成果を挙げた。しかし、総理の靖国参拝が問題となる中で、行き詰まりが生じ、現在、中国、韓国とは、首脳同士が会う事すら儘ならない状態となっている。また、両国間の国民感情も少なからず悪化している。
 心の中で慰霊の気持ちを持つことは極めて大事で自然なことである。しかし、総理の立場にある限り、心の問題と行動の区別は海外では理解されにくいことを考慮しなければならない。総理として行動することにより、中国、韓国との関係を悪化させ、更にアジア地域において日本のイニシアティブを低下させることは避けなければならない。このままでは、日本は大きな国益を損なう恐れがある。したがって私は総理になった時には、靖国参拝を控えるつもりである。小泉総理の靖国神社参拝に対して、中国、韓国には冷静な対応を呼びかけたい。
 靖国問題が解決したとしても、中国、韓国とはその他の問題が存在しうまくいかないとの指摘がある。しかし、靖国問題が両国との間に刺さった大きな棘として外交上の障害になっていることは事実であり、この問題をまず解決していかないことには両国との関係が前進していかないことも確かである。

 日本の外交を考えると、まず米国との関係が基軸になることは当然である。自由主義、民主主義という共通の価値観に立つ同盟国として、両国の関係をこれまで以上に真に発展、強化させていかなければならない。
 その上で、アジアとの政治、経済的な相互依存関係は年々緊密性を増しており、アジアとの共生は今後の日本を考えていく上で極めて重要である。今後とも対話を通じて相互理解と相互信頼を深化させるとともに、ASEAN諸国などを戦略的パートナーとすることを含め、アジア域内の共通利益を拡大していくことが必要である。また、大国として近年存在感を増してきているインドとの交流を深めていくことも重要である。
 現在の中国、韓国との関係は、首脳外交の停滞が、両国との関係改善に影を落とす形になっている。ともすれば、お互いのナショナリズムが剥き出しの形で直接衝突しがちである。特に中国とは、政治体制上、政治と重要な経済問題とを切り離すことは困難であり、首脳外交で現状打破を図らなければ、経済関係にも波及しお互いの国益を損なう状況に陥っていく。
 中国、韓国とは、お互い欠くべからざる関係であるということを、首脳同士が認識し合い、必要があればすぐに直接意見を交わせるよう、アジアホットラインを構築する必要がある。
私は、財務大臣として、今年「日中財務対話」「日韓財務対話」を始めた。それぞれ中国、韓国の財務大臣と年一回定期的な意見交換の機会を設けることに加えて、財務省の担当レベルでも横断的に直接顔を合わせて意見交換することによって、より太いパイプを両国との間で築いていくものである。この会議の実現の背景として、8年前のアジア金融危機の経験がある。二度と金融危機をアジアで起こしてはならないという思いは中国、韓国にも強く、再発予防の枠組みは年々強化されてきており、更にアジア共通通貨単位の研究も緒についた。中国、韓国の財務大臣とは本当に頻繁に意見交換している。こうした流れを首脳レベルに上げていくことが必要である。
 北朝鮮を巡る安全保障上の問題にいかに取り組んでいくかは言うに及ばず、地震、津波、新型感染症等の予知・予防、アジア域内の自由貿易の推進、エネルギー、食糧、環境の問題への対応等、東アジアにおいて、首脳のリーダーシップの下、この地域が一体となって取り組むべき問題は目白押しである。
 こうしたことを踏まえれば、中国、韓国にとっても、日本との関係改善は急を要すると考えられる。また、中国、韓国とはそれぞれ二国間の対話を進めるとともに、日中韓の三国のコモン・アジェンダを一緒に話し合い、アジア全体での取り組みに貢献していくとともに、二国間の対話の糸口にしていくという視点も重要である。
 日本と中韓との関係改善に近道はないと考えている。これからも生じてくる様々な問題に、双方が解決策を見出していくためには、それぞれの国民が様々なレベル、分野で交流し、お互いを理解していくことが基礎になる。両国がそれぞれ戦略的判断と健全なナショナリズム、言い換えるなら、自国の歴史や伝統に対するおおらかな自信、を基礎とした相手国への理解、が必要である。
 幸い、日本と中国、韓国の民間レベルの交流は、これまでの歴史上最も盛んで深いものとなっている。首脳外交での関係改善が図られ、両国首脳が先頭に立って交流を促進することができれば、日本と中韓の関係は未来を見据えた建設的なものとなっていく。それこそが首脳の責務である。
 中国、韓国とは、隣国として長い歴史があり、これまでもいろいろな問題があり、これからもいろいろな問題が常に発生するだろう。しかし、お互いに欠くべからざる関係であることは避けようがない。首脳同士が腹を合わせて話し合い、未来に向けて解決していく姿勢こそが重要である。

 

谷垣禎一の三つの決意
  
―自民党総裁選立候補にあたって

(平成18年7月27日(木))

 1.自民党総裁選への立候補


本日はお集まりいただきお礼申し上げる。

 3年近く財務大臣を務めてきた。財政の仕事は「国のかたち」を考えることそのものである。宮澤大臣の下でこの仕事に携わった8年前には、まさに日本経済は奈落の淵に陥る寸前であったが、日本はよみがえった。人口減少、世界規模での競争など、現在、日本を取り巻く環境は厳しい。これまで国のかたちを考えるなかで、自分自身、これからの日本のためこれからの国民のため、何が出来るかを、心に問いかけてきた。

 そして決断した。 

 私は9月の自民党総裁選に立候補しようと考えている。したがって、本日より総裁選に立候補する者として、私自身の考えを国民の皆さんに正直に語り、訴えていきたいと思う。

 これからの日本を考えていく上で、政治に課せられた最も重大な使命は、一言で言えば「信なくば立たず」、国や政治への信頼を得るということだと思う。そのための基本は、国民の皆さんに正直に向き合い、真実を語り、国民をあざむかないことだと考えている。そのために私は逃げずに正直に訴えるべきことを訴えてきたつもりである。

 明日の東京ブロックを皮切りに、来るべき9月の総裁選に向けて各地で国民の皆さんと向き合い、語り合う機会を持つことになる。そうである以上、国民の皆さんに正直に私自身の思いを明らかにし、立場を鮮明にしなければいけないと思う。そうすることが、国民の皆さんと正直に向き合うことになると、私自身信ずるからである。

 その意味で、現在私が持っている大きな懸念について、今日はお話ししたい。
 それは、
(1)首脳同士が会えない隣国との異常な関係を正し、アジアホットラインを構築すること、
(2)シャッター通りに苦しむ地域の本音を受け止め、地域の活力を本当に取り戻すこと、
(3)子や孫へツケの先送りを許さず、財政の立直しに逃げずにぶつかること、
の3つである。

 

  2.アジアホットラインを構築する


 日本にとってアジア諸国の重要性は言うまでもない。各国の首脳がいつでもすぐに語り合うことが出来るようにする。それが日本の外交にとってますます必要になってきている。しかし、現在、中国・韓国とは、首脳同士が会うことすら儘ならない状態となっている。これは、どう考えても異常な関係である。早急に関係の改善を図っていかなければならない。

 アジア各国は多様であるが、近年の政治・経済的な相互依存関係は緊密性を増している。アジアとの共生は今後の日本を考えていく上で極めて重要である。今後とも対話を通じ相互理解と相互信頼を深化させるとともに、ASEAN諸国などを戦略的パートナーとすることを含め、アジア域内の共通利益を拡大していくことが必要である。

 北朝鮮を巡る安全保障上の問題にいかに取り組んでいくかは言うに及ばず、近年、東アジアにおいて、首脳のリーダーシップの下、地域が一体となって取り組むべき問題は目白押しである。
 ・地震、津波、新型感染症等をどう予知し、予防していくか
 ・域内の自由貿易をいかに推進していくか
 ・エネルギー価格上昇の中、石油等の資源をいかに安定的に開発・確保するか
 ・世界的金利上昇の中で通貨危機の再発予防の枠組みをどう強化するか
これらの諸問題には、首脳同士が腹を合わせて話し合い、解決していく姿勢が重要である。

 特に、中国、韓国とは、お互い欠くべからざる関係であることを、首脳同士が認識し合い、東アジア全体の発展という大きな視点から、必要があればすぐに直接意見を交わせるよう、アジアホットラインを構築する必要がある。そうしなければ、諸問題の真の解決は望めない。

 その障害になっているのは、靖国参拝問題であることは否定できない。靖国神社の問題は日本が独自の立場で主体的に判断すべき事柄であり、その際、さまざまな点を総合的に判断することが必要である。我が国の主体的判断に外国からの意見を直接関連させるべきではない。

 しかし、あえて相手国の国内政治や国民感情を刺激しないよう配慮することは外交上必要である。また総理の立場にある限り、心の問題と行動の区別は海外では理解されにくいことも考慮しなければならない。

 心の中で慰霊の気持ちを持つことは極めて大事で自然なことだ。しかし、総理として行動することにより、対中・対韓関係を悪化させ、更にアジア地域において道義性を損なうことで、日本のイニシアティブを低下させることは避けなければならない。私は、このままでは、大きな国益を損なう恐れがあることを、国民の皆さんに訴えたい。私は、総理になった時には、靖国参拝を控えるつもりである。

 外交には戦略的判断と健全なナショナリズムが必要だ。皆さんと一緒に、胆力を持って、アジア外交の正常化を目指していきたい。

 

  3.地域の活力を本当に取り戻す


 健全な地域社会がなければ健全な国はない。地域が滅びれば、それは国の荒廃につながっていく。その意味で、私が最も心配しているのが、「シャッター通り」だ。

 地方を回り地元の声に耳を傾けると、いかに大都会に富を吸い寄せられ、将来展望が描けない地方・地域が多いことか。地域の本音を受け止め、地域の活力を本当に取り戻すことが、今こそ求められている。

 大きな構造変化の中にあってもしっかりと成長していける経済社会を築くことが、今後必要となる。この新たな成長は民主導のものではあるが、単に市場メカニズムの中での拝金主義的な成長ではなく、国民一人ひとりの能力が十全に発揮され、地域社会の活力の中から生み出される柔軟で地に足のついた持続性のある成長でなければならない。

 国は、改革の先にある社会を見据えながら、また国民の声を吸い上げながら、そうした成長を支える経済社会構造を創り上げていく必要がある。

 しかし、改革が目指す社会は決して効率性だけを追及する弱肉強食の一面的な冷たい社会であってはならない。個を確立した個々人が互いに切磋琢磨し、競い合い、個の発現を謳歌しつつも、本来日本人が持っている「家族の絆」「地域社会の絆」の中で支え合う社会、そして「国民と国家」が信頼の「絆」で結ばれている社会を築いていくべきであると考えている。

 私は、地域の本音に耳を傾け、弱者の小さな声にも耳を傾けたい。そして、地域の活力を本当に取り戻すよう全力を尽くしたい。地域の自然、歴史、文化などその地域にしかない良さを活用した産業の発展、女性・高齢者をいかした地域のひとづくり・雇用の創出、真に必要なインフラの整備、地域コミュニティーの再生など、総合的な取り組みが必要だ。

 こうした施策を、国民の心のありようにも訴えかける「『絆』の国民運動」として一体的に推進していくことが重要である。「『絆』の国民運動」を国家のリーダーたるものが先頭に立って展開していくのである。

 地方の個々の自治体の財政は、まだまだ厳しい状況が続いており、地方での不安感に拍車をかけている。増収で潤う都市部の自治体とそれ以外の自治体とで税収の偏在が生じていることが原因だ。

 国の厳しい財政事情と既に全体として地方へかなりの財源移譲が行われていることを踏まえれば、地方自治体の間で、税収の偏在性是正に取り組むことが現実的だ。法人住民税と法人事業税の地方自治体間の配分を見直すとともに、地方交付税の配分方法について見直しが必要である。

 小さくても努力する自治体が報われる仕組み、恣意的でない透明な仕組みを創り上げなくてはならない。

 

 4.財政の立直しに逃げずにぶつかる


 先般の「骨太の方針」では、債務残高の対GDP比を安定的に引き下げていくことが財政再建の本質であること、2011年を目途として今後5年間、具体的な歳出削減策を実行するため、血のにじむような努力を続けていかなければならないこと、そして、基礎的財政収支の黒字化ですら、歳出削減だけでは達成できず、今後、歳入改革の具体的な議論を行わなくてはならないこと、が示された。

 しかしながら、「骨太の方針」の大きな問題は、2010年代半ばの債務残高GDP比の安定的引下げに向けた具体策が全く示されておらず、財政健全化の道筋が不透明だ、という御批判をいただいていることである。

 2011年の先、2010年代半ばに向け、さらにどの程度の改革努力が必要となるのか。この点について政治が口を拭っていては、国民の将来に対する不安を払拭することはできず、責任ある態度とは言えないのではないか。本当のことを皆さんは知りたいと思っているのではないか。臆することなく、逃げずに、国民に改革の具体像を語ることが政治の責任だと考える。

 増税は誰もが避けたい。増税の幅をできるだけ小さくするために、できる限りの努力をしなければならないことは当然である。しかしながら、国の歳出のうち、国債の利払いを除くと、半分近くは、年金、医療、介護等の社会保障関係費であり、これは、削れば削るほど良いという性格のものではない。

 社会保障関係費は、制度の見直しを進めるとしても、高齢化の進捗に伴い、国・地方ともに益々増大すると見込まれている。また、平成21年度までに基礎年金の国庫負担割合を2分の1まで引き上げるための安定した財源を確保しなければならない。さらに、今後、国を挙げて少子化対策に取り組むための経費も必要になってくる。

 このような社会保障関係費を、次世代に負担を先送りすることなく、安定的に支えていくための財源を確保することは大きな課題であり、早急に手を打つ必要がある。

 我々は、互いに支え合う「社会」の中で生きている。支え合うということは、弱者を支えるために、国民皆で負担するということであり、これがまさに社会保障の役割である。私は、国民の安心を確保し、信頼と活力ある経済社会の基礎を築いていくためには、将来的にも充実した社会保障制度を維持・堅持していくことが不可欠であると考えている。そして、多くの国民も社会保障制度の安心を維持するための負担であることを明確にするならば、相応の負担を受け入れてくれるのではないか。

 私は、政治家として、消費税を社会保障のための財源と位置づけ、2010年代半ばまでのできるだけ早い時期に、少なくとも10%の税率とする必要があると考える。消費税は、少子化が進む中で勤労世代に負担が集中せず、国民全体で広く公平に負担するという税金であり、社会保障の財源として最も適していると考えるからである。

 他方で、社会経済情勢の変化等を踏まえて、消費税だけでなく、所得税や相続税なども含め、税体系全体のバランスのとれた見直しを行う必要がある。活力と信頼の社会を支える税財政のグランドデザインが必要である。

 

 5.おわりに


 以上、総裁選に出馬するに当たり、私が大きな懸念を持っている3点について申し述べた。いずれも皆さんに正直に誠実にお伝えしなければならないと私が痛切に感じている事柄である。今後、9月の総裁選までの間、皆さんと語り合う機会の中で、こうした私の思うところをお伝えしていきたい。
 

上に掲げた課題は、単に効率性を追求するだけでは実現できません。我が国には調和を旨とする素晴らしい伝統があります。その伝統のもとで培われてきた「家族の絆」、「地域社会の絆」、そして「国民と国家の絆」を尊重し、再構築していくことなしに、上記の政策は達成できません。我が国の伝統・文化を大事にし、誇りを持って、「活力と信頼の国家」を作っていきます。

 
 
 
 

 

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